• Tel (059) 336-2404
  • Fax (059) 336-2405
  • Access

研修を終えた方のコメント

研修医の

当院で研修を終えられた医師たちの感想やコメントなどを掲載します。

私は市中の急性期病院で研修医として約2年間勤務してきました。急性期としての加療が終わるとリハビリ転院や慢性期病院に転院される方や、在宅医療に移行される方がたくさんいらっしゃいましたが、その先で何が行われているかはほとんど知りませんでした。

初めの1週間はいろいろな先生につかせていただき、それぞれの診療を見学させていただきました。その後は徐々に医師は私のみで、看護師さんやアシスタントさんに付いていただき診療を行わせていただきました。ローテーション初期は、まず医療スタッフ自らが出向き患者様のテリトリーに入り診療を行うという特殊さに総合病院との大きなギャップを感じました。行える検査も当然ながら限られており、普段のように気軽に採血や画像検査ができない中で如何に判断し、必要であれば搬送を考えるかという難しさを実感しました。また、身体診察や問診がいかに大切か、普段自分がどれほど検査に頼りきってしまっているかを再認識させられました。先生方を見学させていただいていると、身体所見と問診が主であり、採血は最低限、画像はポータブルエコーまでで判断、という普段の自分では考えられないほどシンプルな診察をされていて非常に勉強になりました。

ギャップだけではなく「むしろ在宅でここまで医療行為ができるのか」ということにも驚かされました。「さすがに点滴が必要になれば病院に行くのかな」と考えていましたが、自宅で点滴もできると知り、さらにそれぞれのご自宅で点滴棒を自作していただき、抜針も覚えていただいたりと、やろうと思えばいくらでも医療行為ができるのではないかという可能性さえ感じました。在宅酸素療法や在宅人工呼吸器など、言葉で聞いたことはあっても実際に見るのは初めてでした。

また在宅医療ならではの患者様として、癌終末期でBSC方針となっている方の管理や、老衰でお見取り方針となっている方の訪問もさせていただきました。癌終末期の方で難しいのは、患者様自身の受け入れに関してだと感じました。特に若年の方では、自分が癌になって死が近いというのは受け入れ難い事実であり、実際に訪問させていただいた方もほぼ全く受け入れられていない方がいらっしゃいました。医療スタッフやご家族様がしようとしたことを全て拒否され、外部からの介入もして欲しくない、といったご様子でした。もともとが強がりな性格だと家族様は仰っていましたが、それ以上に自分が癌終末期の患者であることを受け入れられておらず、この先自分はどうなってしまうのか、家にやってくるこの人たちに何ができるのか、といった不安でいっぱいなのだろうという印象でした。まだその方は在宅医療の介入を始めた直後であり、その後私が訪問する機会はありませんでしたが、担当されていた先生は、回数を重ね信頼を得ていくしかないと仰っていました。かなり根気の必要なことだと思いましたが、自宅にいることを望む患者様やその家族様の要望に最大限寄り添おうとする姿勢に感銘を受けました。

また全体を通して、家族様や他の福祉のサポートの重要性を感じました。上述した点滴のことや、人工呼吸器管理をしている方の吸引処置、薬剤管理など、家族様の手が無ければなし得ない部分も在宅医療にはたくさんあり、医療者以上の時間をかけて患者様に当たっていただき在宅医療を可能としてくださっている家族様には感謝が尽きないと感じました。 患者様の背景が様々である以上、やはり家族のサポートが受けられない方もいらっしゃいますが、そんな時に訪問看護や訪問ヘルパーの方はもちろんのこと、さらに近隣の方が援助してくださっている例もあり、たくさんの人に支えられながら1人の患者様の望みを叶える尊さを目の当たりにしました。

普段の病院とのギャップに驚き、単独で訪問診療を行うのに緊張した1ヶ月間でしたが、その分たくさんのことに気付かされ、感銘を受け、後期研修へ向けて少し逞しくなれた1ヶ月でもありました。短い期間ではありましたが、見学をさせていただき指導をしていただいた先生方、たくさんご迷惑をおかけしても温かく見守って診療を共にしていただいた看護師さんやアシスタントさん、ケアマネジャーさんや事務の皆さん、お世話になりました。ありがとうございました。

まずは石賀院長をはじめ医師、看護師、メディカルアシスタント、スタッフの皆様にはたいへん親切にしていただき本当にありがとうございました。1ヶ月という短い期間でしたが、非常にたくさんのことを学ぶことができました。
研修初日にクリニックを訪ねさせていただいたときには、在宅医療とは何か全く分からない状態でした。もちろん、学生時代の授業などで言葉として概念や、制度自体は知っていましたが、実際にどのように診療が行われているのかイメージができていませんでした。実際に毎日の訪問診療、往診に一緒に付いて行かせていただくと、在宅でできることの多さに驚きました。外来診療を家でも行うくらいに考えていたのが、実際には輸液や薬剤投与、人工呼吸器の使用など、入院しないとできないと思い込んでいたことが、日々在宅の現場で実践されていることを目の当たりにしました。
反対に、私を含め、総合病院で働く医師が、在宅でどこまでできて、どこから入院加療が必要かを知らないことが問題だと感じました。どういったことが家で可能か知ることで、患者様にも在宅医療を提案でき、もっと家でご家族と過ごせる時間を増やせる人がいると思います。普段は家で診て、必要な時に急性期医療を受けるという体制がよりスムーズになれば良いと思います。

また、在宅医療の魅力として、患者様、そのご家族の人生そのものに関わっていくことができると感じました。普段、急性期病院で診療を行っているとどうしても疾患や治療そのものに視点がいってしまいますが、1ヶ月の研修を通じて疾患がどのようにご本人やご家族の人生に関わり、医療として何ができるのか、を考えることの楽しさややりがいを改めて実感しました。
みなさん最期は家で過ごしたいけど、家族に迷惑をかけたくないという、相反する思いを抱えています。もちろん大変なことはいくつもありますが、ご家族にとってもその時間はとても価値のあるものだといろいろなお宅に伺い感じました。「家で死にたいけど、家族も仕事があるでな・・・。」という患者さんの言葉に、ある訪問看護師さんが「お父さん、家族さんたちに親孝行させてあげてよ。」と言ったことがとても印象的でした。家で過ごすことの葛藤に対して、少しだけ後押しをしてあげ、ご本人、ご家族が安心して過ごせるようにプロフェッショナルとしてサポートしていく姿に感銘を受けました。

短い期間ではありましたが、大変貴重な経験をさせていただき、本当にありがとうございました。研修を通じて、患者様の人生そのものを見つめることの大切さを改めて学ぶことができました。この経験を糧に医療者として日々精進していきたいと思います。

私は今後地域への派遣で訪問診療に携わることがあるため、いしが在宅ケアクリニックで研修させていただくことにしました。
実習開始前の訪問診療のイメージは、病院に来院できない方や看取りとなった方を対象に、病院で行われているような外来診療を、単に場所を変えて行うというイメージでした。しかし実際に研修をさせていただくと、訪問診療のイメージが大きく変わりました。

例外はありますが、病院での診療は疾患を捉え、それに対する適切な治療を行うものでした。◯◯歳◯性の◯◯という疾患に対し、この治療を行っていきます。しかし訪問診療では、疾患ではなく患者様を捉え介入をしていました。同じ疾患や似た境遇の症例でも、◯◯さんはこういう方だからこういう介入が良い、というように患者様それぞれに適した治療や介入を考え、まったく違うアプローチをしていることが多々ありました。
もちろん急性期病院と役割の違いはあるため捉え方や介入の方法も異なってきますが、疾患だけでなく、患者様を捉えることの大切さを感じることができました。また訪問診療では、患者様本人だけでなく、その家族や周囲の方々も捉える必要があることも学びました。
訪問で医師が24時間対応は可能といっても、最も長く過ごされているのは家族の方々です。そのため患者様の普段の様子や家族にしか言えない本音を教えていただくこと、さらに医療者には介入できない部分を協力いただくことも可能です。一方、家族様が介護で疲弊されているようであれば労わることや、負担を軽減するような介入をすることも必要と学びました。

また今回の実習では、残りの人生を家で過ごすことの素晴らしさも学べました。
実際に訪問させていただいた、末期癌で訪問診療を開始した一例ですが、訪問開始時は衰弱しており、余命はそう長くないと先生は思われ介入を開始されたそうです。しかし自宅で過ごし、家族の方々に囲まれるうちに次第に活気を取り戻し、食欲が増え、今では逆に肥満が問題になっているほど元気になられていました。
さらに稀なことではあると思いますが、病気そのものまで現在は検査でわからなくなっていました。この症例は極端な例と思いますが、しかし実際に住み慣れた家で、食べ慣れた料理を食べ、大好きな家族と過ごすことで、それだけで活気を取り戻し、楽しく最後を迎えることができる方をたくさん訪問させていただき、病院でなく自宅で過ごすことの素晴らしさを感じることができました。
しかし、自宅では病院のように医療者が常駐しているわけではないため、患者様や家族様が心配されるのは当然であります。しかしいしが在宅ケアクリニックでは、そのような不安を感じさせないような対応をされており、訪問診療の素晴らしさを感じることができました。

1ヶ月間の研修で本当にたくさんの貴重な経験をさせていただきました。今回の実習で培った経験を糧に、これから邁進していきます。またスタッフの方々みなさまに優しくしていただき、楽しく研修を終えることができました。短い間ではありましたが、本当にありがとうございました。

普段は愛知県の常滑市民病院の方で初期研修をさせていただいており、今回は研修で2週間お世話になりました。 常滑からいしが在宅ケアクリニックへ研修に来させてもらうことは少ないのですが、当院のOBの先生に、こちらでの研修がとても勉強になった旨を伺い、意を決して来させていただきました。

研修内容なのですが、最初から最後まで非常に勉強になることばかりでした。 いろいろな先生の診察に同行させていただき、多様な症例を体験でき、少ない医療資源でいかに工夫しているか、客観的検査がやりにくい中で、いかに診察を行って、病状の安定化や、新たな疾患を未然に防いでいるか、学ばせていただくことが無数にありました。

また、なぜこの患者さんが在宅という選択肢を選んだのか、どういう医療のサポートが入っているのか、家族はどういうフォローをしているのか、普段病院で気になりつつも避けて通ってきたこれらの内容に正面から考えることができたこともよかったです。

2週間と短い間でしたが、とても充実したいい研修になりました。 それもひとえに石賀院長をはじめとしたスタッフの方々が暖かく迎え入れてくれて、皆さん優しくしてくださり、おいしいご飯まで振る舞っていただけたからだと思います。

最後になりますが、今回いしが在宅ケアクリニックで学んだことを存分に活かしていきたいと思います。 ありがとうございました。

市立四日市病院で初期研修医をしております矢野と申します。
現在急性期病院にて研修しており、在宅、訪問医療について触れる機会がなかったため研修を志望しました。クリニックの医師、看護師に同行させていただき様々な患者様の自宅を訪問しました。
患者様の疾患、背景、思いだけでなく家族様からの要望にも気を配りながら診療をしており様々な視点から診療に向き合う姿を見ることができました。
もともと私自身疼痛コントロールに興味があり、当院での緩和ケア研修もしておりました。そのため在宅医療での疼痛管理をぜひ学ばせていただきたいと考えておりました。末期がん患者様に対しての医療用麻薬の在宅での使い方を訪問しながら学ぶことができました。
痛みは身体面だけではなく心理・精神面、社会環境面でもあることでは知ってはいましたが実際の患者さんでの苦痛を聞くことができ、その苦悩に対して一つ一つ丁寧に時間をかけて傾聴している姿を見ることができ感銘を受けました。また、学生、初期研修では医学中心の考え方で物事を考えておりました。もちろんその考え方も重要ではありますが、在宅では限られた医療資源、時間で行う診療であり、医学ではなく医療としての診療も触れることができました。

2週間という短い間でしたがいしが在宅ケアクリニックの石賀院長を始め医師、看護師、メディカルスタッフの方々が暖かく研修を迎えていただいたおかげで充実した研修を終えることができました。大変感謝しております。
これからもこの研修で学んだことを活かし、これからも頑張っていきたいと思います。本当にありがとうございました。

1ヶ月のいしが在宅ケアクリニックの研修では、多くの学びを得ることができました。

私は普段は四日市市内の急性期病院で研修をさせていただいています。そこでも患者さんの治療に携わらせていただいていますが、病院での医療と在宅での医療では違う部分がたくさんありました。
まずは、在宅医療では施行できる検査が限られており、身体診察が占める比重が大きいということです。もちろん普段から身体診察はきちんと行っているつもりですが、また画像で確認できるからと考えている面もあったと思います。在宅医療では診察や簡便な検査のみで治療方針を決定することも多く、まだまだ診察能力が未熟であることを痛感しました。経験が重要でもあると思うので、これからも多くの経験を積まなければと改めて思い直すことができました。
また、在宅医療では病気を診るだけではなく、家庭や家族に関しても何らかの介入を行なっている場面を多く見かけました。普段は正直なところ、どんなご自宅でどのように生活されているのか、家族はどれぐらい患者さんの生活に介入が可能なのかなどは、聴取はしても深く考えることはなかったように思います。しかしより良い在宅医療を提供するためには、それらへの助言や介入が必要不可欠でありとても重要なのだと研修を通じて実感しました。
そしてその時に重要になるのが多職種の連携です。在宅で治療を行う患者さんは福祉サービスや行政も利用しながら自宅生活を行う場合が多く、十分なものを提供するためにはうまく連携をとりながら各個人にあったものを見つける必要があります。クリニックの皆さんはそれぞれ意見を出し合いながら、時には外部の人とも密に連絡、連携をとりながら在宅医療を行なっている姿をよく拝見しました。そのような働きかけはどこで医療に従事しても必要なことだと思うので、今回の研修を今後に活かしていきたいと思います。
他に印象に残っているのは、病院では全くご飯が食べられなかった方が、自宅に帰ってきたらしっかり食べることができるようになり、元気に外出までできるようになったとお話しされているご家族です。何軒かそのようなお話を伺いました。在宅医療は、ご本人や家族の希望、病状によってできる場合とそうでない場合はあるとは思います。しかし、希望される場合はやはり慣れ親しんだ自宅で生活する方がご本人にとって満足のいく生活を送るためには良いのだなということを感じました。

今回の研修ではこれまでとは少し違う面から医療を学ぶことができました。スタッフの皆様に助けていただきながら実りある研修ができたと思います。本当にありがとうございました。

私は現在、三重県立総合医療センターで研修医をしています。入院患者さんの担当をさせていただく場合、急性期治療を終えると、退院されたり慢性期病院へ転院となることが多く、なかなかその後の経過をみる機会がありません。

在宅医療を研修させてもらってまず感じたことは、自覚症状や家庭環境、居住環境にフォーカスを置いており、病気よりも患者さん自身と寄り添い、問題に対して一緒に向き合っている印象がありました。
病院だと、たばこやお酒、甘い食べ物など身体にとって有害になるものは控えるようにお伝えすることが多いです。しかし、在宅医療では患者さんがやりたいことを止める場面は少なくQOLを重視している感じが面白いなと思いました。
訪問させていただいた患者さんの中に「お酒とタバコが今の楽しみや。最後まで好きにさせてもらえて幸せや」と話されている方がいました。その日、奥さんに看取りの説明をした際に涙を流されてはいたけど、後悔はなく死に対してネガティブな感情は持っていない印象でした。その2日後にお亡くなりになりましたが、それまでの過程もいかに苦痛を和らげるかという点に重きを置いており、治療よりも人生の最期をより良いものにするためのサポーターという印象を受け、急性期病院とはまた違うやりがいを感じました。

また、訪問し衝撃を受けた患者さんがいるので紹介させていただきます。
その方は癌の末期で入院中は全然元気がなく顔も真っ青で食事もろくに食べられていませんでした。退院して帰宅した日の初診に同行させていただいたのですが、終始ニコニコしており、「うなぎが食べたいな」「孫はいつ帰ってくるんや」など仰っていてみんなで楽しく会話をしていました。患者さんが帰宅されたのをご家族が喜ばしく思っているのもひしひしと伝わってきましたが、それ以上に患者さんが本当に嬉しそうで入院時との表情の違いにみんながビックリしていました。
今まで在宅医療のイメージは、最後をお家で迎えるためのサポートという認識でした。自宅に帰ることが、これほど患者さんに元気を与えるのかと衝撃を受けました。

また、訪問診療全体を通してコミュニケーションの大切さを痛感しました。最初は、若い癌終末期の方の訪問の時に何を話していいかわかりませんでした。しかし、残りの人生の中でやりたいことのサポートをするにはしっかりコミュニケーションをとって関係を築き、好みやご家族さんとの関係など患者さんについて知る必要があると実感しました。また私自身、患者さんとしっかりお話をすることが好きなんだと気づくことができました。

最後に、クリニックの皆さん本当に優しくて居心地がよかったです。1人で訪問した際にわからないことがあるときは看護師さんやアシスタントさんが優しくサポートして下さって心強かったです。楽しく充実した1ヶ月を過ごすことができました。本当にありがとうございました。

私は普段、急性期病院に勤務しており、救急外来にて"突然の病気や事故で昨日まで元気だった人が急に亡くなった"という状況で死亡宣告に立ち会うことが多くありました。突然の別れでご家族は気持ちの整理がつかず、泣き崩れたり、もっと伝えたいことがあったと後悔されたりしていることもしばしばありました。このような経験から、いつしか自分の中で死はネガティブで悲惨なものというイメージが定着していましたが、いしが在宅ケアクリニックでの研修でイメージが変わりました。

お看取り間近の方の訪問診療に同行させていただいたとき、ご本人もご家族も穏やかで、お別れが近いと分かっていながらも明るく過ごされている姿が印象的でした。お別れまで時間的猶予がある点は急性期病院での経過とは異なりますが、「患者さんやご家族にいい思い出は作れないか」、「充実した時間をいかに作り出すか」、医師や看護師など多くのスタッフが一人の患者さんのためにアイデアを出し合って模索している姿を研修中に度々目にしました。私が研修していた時期はちょうど桜が咲く季節で、家族と外で花見をしたいという患者さんの希望を叶えるべく、環境調整や体調管理などをどのようにしていくか、医療スタッフが意見を出し合って調整していました。その後花見を楽しんでいただけたようで、満足そうな笑顔を浮かべた患者さんとご家族の写真を見せていただき、私まであたたかな気持ちになりました。このように患者さんの希望に寄り添って叶えることができるのは、病院と比較して患者さんやご家族との距離感が近い在宅医療ならではの良さだと感じました。またこのような思い出は、患者さんが亡くなった後に遺された家族にとっても、前向きに生きていく一助になっているのではと感じました。医療が発達しても突然の悲しい別れをゼロにすることは難しいと思いますが、在宅医療では穏やかに最期を迎えることも可能であるということを目の当たりにし、私の死生観が変化した1か月間でした。

最後になりましたが、いしが在宅ケアクリニックの皆さま、あたたかくご指導いただき誠にありがとうございました。研修させていただいた1か月間の経験を糧に今後の診療に励んでいきたいと思います。

私は現在三重県立総合医療センターで研修医として勤務をしており、急性期治療を終えたら慢性期病院に転院になる患者さんがほとんどです。普段診療している患者さんがその後どのような経過をたどるのか、看取りはどのように行うのか、ご家族はどのような想いで介護をしているのかを学びたいと思い、研修先として選択しました。

総合病院と在宅医療では異なる点が多く、毎日が新鮮で勉強になることばかりでした。在宅で行える検査は血液検査やエコー検査など限られており、問診や診察が重要であること、普段はいかにデータや画像所見に頼ってしまっていることなどを痛感しました。診断よりも現時点での苦痛を取り除くことを重視しており、総合病院よりも患者さんやご家族の希望に沿いやすいため、患者満足度が高い印象を受けました。
1か月という短期間でしたが、毎週往診していると状態の変化に気づきやすく、元気になっていく様子がみられると、患者さんやご家族と喜ぶことができました。在宅では、患者さんのこれまでの生活の様子や趣味などを身近に感じることができ、介護者の悩みや疲労度も理解しやすかったです。訪問看護師やケアマネジャーと密に連絡を取り合っており、問題点を速やかに解決できることも、在宅医療の魅力だと感じました。相談外来で患者家族の話を伺っていると、24時間体制であること、治療可能な急性期の病態である場合は総合病院に紹介できることが、ご家族の安心材料になっていることを実感しました。

これまでの研修では、救急外来に心肺停止で搬送された方に死亡宣告をすることはあっても、亡くなるまでの経過をみる機会はほとんどありませんでした。しかし今回、死亡数時間前の徴候やご家族の不安などを間近に感じることができました。実際、胃がん末期の方の看取りに立ち会うことができました。事前に、看取りが近いことや、呼吸が止まったら落ち着いて行動することをご家族に伝えてあったため、ご家族に囲まれて穏やかに亡くなりました。大阪から親戚も来られ、ご家族が喜んでいたのが印象的でした。数十分間同じ空間にいただけでも言葉にできない想いがこみ上げてきました。何日間もこのような状況で介護していた家族の想いは到底理解できないと感じましたが、その分少しでもご家族に寄り添える声かけをしようと必死でした。また、末期のがん患者や老衰の高齢者が多いイメージでしたが、その他にもWilson病やRett症候群など稀な疾患も勉強することができました。状態が落ち着いている患者さんは、毎回の訪問でスタッフと会話することを楽しみに待っていてくださる方も多くいました。

2週目以降は単独で訪問診療をさせていただき、緊張しながらも責任感や達成感を得ることができました。看護師、アシスタント、事務員など皆さんに支えていただき、大変恵まれた環境でした。空き時間には研修動画をみせていただき、医療用麻薬の使用法や、在宅で使える診察などを学びました。朝礼での体操や、毎週木曜日の食事、訪問中のお昼休憩など、普段は経験できないこともあり、とても楽しかったです。
毎日が充実しており、実際に訪問しなくては実感できない多くのことを学べました。1か月間大変お世話になり、ありがとうございました。

「病気だけを診るのではなく、患者さんという一人の人間を見る医者になりたい。」
熱い志をもって医学部生となったはずが、6年間の医学部生活と1年半の初期研修生活の中で、その初心を忘れ、いつの間にか患者さんが「見えなく」なりました。
問診、身体診察、各種検査から診断し、治療を行う。医師としての技術は少しずつ向上している実感はあれど、患者さんを見ることができていない。疾患の治療としては正しいけれど、この患者さんにはベストの治療ではないのでは? この治療はただただ負担をかけているだけなのでは? 疑問を抱えながらも毎日の診療を行い、気づけば初期研修修了まであと3ヶ月となりました。
在宅診療に対するイメージも、ただただ死を待つ患者を看取るだけ、大した医療も提供できないだろう。若輩の身で大層失礼な思いで研修を開始しました。

そんな私でしたが、研修1日目に大きなインパクトがあったことを今でも覚えています。
患者さんの家を訪問したときに、伝わってくる情報の多さ。家のデザイン、飾ってある写真、家具のレイアウト、家族との関わり。当然患者さんによって千変万化します。家というものはその方の価値観、ライフスタイル、アイデンティティなど人生の大部分が反映されていて、患者さんという一人の人間の存在の重みを強く実感し、衝撃をうけました。

急性期病院での診療は可能な限り「患者さんを見よう」と思っても、背景も人柄もほとんどわからず、その方の抱える疾患に集中してしまう傾向にあります。しかし、訪問診療では患者さんのことを知る手がかりがたくさんあります。この環境下で患者さんの人柄・人生を尊重しながら可能な限り診察することをこの1ヶ月間意識しました。「疾患1stではなく、患者さん1st」という初心が思い出せたことは、私にとって何よりも代えがたい素晴らしい経験です。

この1ヶ月の研修でもう一つ貴重な経験をさせていただきました。それは「看取り」です。私がある患者さんを訪問させていただいたとき、その方は既に老衰の末期でした。石賀先生がご家族に末期であり、いつ亡くなってもおかしくないことを説明してから、約1週間に3回私は訪問診療させていただき、そして最後に死亡宣告に立ち会いました。
訪問診療の途中では苦しむ様子もあった方が、最後の診察そして看取りのお顔が安らかだったことがとても印象に残っています。一つの生命が全てを使い果たしたその過程、私にはとても尊いものに思いました。
私は普段、救急外来の当直にて心肺停止状態で搬送され、残念ながら助からなかった患者さんを多く見ています。その方の多くは救命処置のために胸骨圧迫などされ、その影響で口から大量の吐血などをする場合もあります。勿論一時的な心肺停止状態から救命処置により蘇生する方もいらっしゃるため、救命医療は不可欠です。その一方で、やりきれなさを覚えることが多い私にとっては、無理な処置なく自然な経過でご家族の立ち会いのもと逝去することの尊さは計り知れないものであり、その過程に立ち会えたことは大きな経験となりました。

いしが在宅ケアクリニックの素晴らしいところは、ただ患者様のライフスタイルを尊重するだけでなく、可能な限り入院と変わらない医療を提供しようとするところにあると思います。胃瘻や腎瘻、様々な人工呼吸器などを用いながら、患者さんの診療をすることは少なからずハードルが高いように思います。それを支えているのは間違いなく、石賀先生を始めとして、スタッフの皆様の努力と熱意あってのことだと思います。木曜日の昼食などや降雪時の除雪作業など、スタッフの皆様がお互いを支え、仲良くしている素晴らしい環境でのこの一ヶ月間の研修は楽しく、大変勉強になりました。

最後になりますが、院長の石賀先生を始めとして、スタッフの皆様、1ヶ月間ご指導下さり、誠にありがとうございました。初めての在宅診療で戸惑い、迷惑をかけることも多かったと思いますが、皆様の温かい励ましの中で楽しく研修を行うことができました。これから整形外科医となりますが、この1ヶ月間の在宅診療の経験は私の大きな宝です。スタッフの皆様や患者さんの皆様に教わった「患者さんという一人の人間が積み重ねてきた人生、歴史、周りの人とのつながりを想像し寄り添う姿勢」を忘れず、患者さんが少しでも高いADLでご自身の歴史の象徴であるお家で楽しく過ごせるよう、腕を磨いていきたいと思います。ご指導誠にありがとうございました。

2023年1月より1ヶ月間研修でお世話になりました、四日市羽津医療センター研修医の辺土名と申します。
この1ヶ月間は自分の人生の中でもこれまでにないような、とても濃い1ヶ月となりました。

在宅医療・訪問診療などは学生の講義などでよく耳にはしていましたが、私自身あまり馴染みがなく、どのように診療しているのか研修するまでは見当がつきませんでした。
実際総合病院などで働いている医療スタッフのほとんどが在宅医療の実態を知らずにいるかと思います。 在宅診療に私自身従事させていただき、多くのことを学ばせていただきました。

研修を通して、世の中にはどうしても病院に行くことができない方や、最後の時間を自宅で家族と過ごしたい方などの普段病院の中だけでは聞くことができない患者さんやご家族の思いを知ることができました。
またその思いに応えるためにクリニックでは24時間365日、日々奮闘されている医師や看護師を始めとする医療スタッフの方々がいらっしゃいました。 一番研修を通して感じたのは患者さんやそのご家族に「心から寄り添う」ということです。

医療スタッフの皆さんが患者さんを第一に考え、言葉を一つ一つ紡いで信頼関係を構築し、寄り添うことで患者さんが安心して医療を受け入れる姿にとても感銘を受けました。 家族の前では強がっている方でも、信頼関係を築いたスタッフの前では辛いこと、悩みや葛藤などを話されている場面を見て、自分もこのように患者様に寄り添える医療人になりたいと思いました。
病院内での医療と在宅医療のギャップに驚きながらの毎日でしたが、全てが新鮮で研修でいしが在宅ケアクリニックを選んでよかったと心の底から思うことができました。

言葉では表すことができない多くの経験と感情を与えてくださった、いしが在宅ケアクリニックの研修には感謝しかありません。
これから医師として生きていく中でこの1ヶ月間に感じたことを常に心に留めて、邁進していこうと思います。

最後になりますが石賀院長を始めとする医師の先生方、看護師の皆様、スタッフの方々本当にありがとうございました。